「電気代はどこも同じ」は本当か? Looopに聞く電力自由化10年の実態

電力小売全面自由化から10年。消費者が電力会社を自由に選べる時代になった一方で、「どこを選んでも同じ」という認識はいまだ根強く残っている。
こうした現状を受け、独立系新電力部門で1位の実績を誇る「Looop」では調査リリースや交通広告を通じて、電気代の見直しを促す取り組みを展開。さらに、電気料金の上昇が懸念されるなか、独自の緊急支援策も打ち出している。
今回、Looop広報・福田沙季氏にインタビュー。電力自由化10年の変化や生活者の意識、広告の狙い、そして今後の電力サービスのあり方について話を聞いた。
電力自由化から10年、広がる選択肢と残る課題

――2016年から「電力小売全面自由化」によって、すべての消費者が電力会社を自由に選べるようになりました。この10年で生活者の意識はどの程度変わったと感じていますか?
新電力会社の選択肢が増えたことで、電気を見直そうとする意識は少しずつ高まってきていると感じています。しかし、今回行った調査で、大手電力会社と新電力会社の違いを理解している方は全体の3割、10年間で電気料金を見直した世帯は2割にとどまっています。まだ多いとは言い難い状況です。
――消費者の選択肢は拡大しましたが、まだ課題は残っている状況ですね。この10年間で電気料金は約1.3倍に上がっている一方で、新電力へ切り替えた人は4人に1人というデータも出ています。節約意識は高い一方で、電気代は見直されにくいということでしょうか。
調査では「約2人に1人が、電気代はどこも同じだと思っている」という結果が出ています。背景のひとつに、電力会社の仕組みに対する理解不足があると感じています。電気は目に見えず、仕組みも複雑なため、理解しにくい側面がありますね。
――「無意識のムダ電気習慣」を10年続けると最大18万円の負担になる可能性があるという結果にも驚きました。知っていれば抑えられる出費だと感じます。
そうなんです。使っていない家電の電源プラグを挿しっぱなしにする「正体不明のゴースト損」は約70,680円、10年以上前の家電を使い続ける「長持ち美徳損」は約38,100円、冷蔵庫の詰め込みすぎなどで生じる「24時間のじわ損」は約46,700円、エアコンの設定温度を上げ下げする「たった1℃損」は約25,900円です。すべてに当てはまると、10年間で大きな金額が発生してしまいます。

――まさに塵も積もれば、ですね。「ムダ電気習慣」に当てはまっている世帯の特徴はありますか。
「配偶者・パートナーと子ども」がいる世帯が35.9%、「配偶者・パートナーのみ」の世帯が22.5%と、ファミリー層が半数を占めています。もちろん、実家暮らしや一人暮らしの方にも一定数当てはまるケースがありますので、すべての方に自分事として捉えていただきたいですね。

電気代高騰の背景と「Looop」の緊急支援策
――現在、イラン・中東情勢の緊迫化により、燃料費や電力市場価格の上昇が懸念されています。消費者としても気になるところです。
原油価格の上昇に伴い、電気代にも今後影響が出てくる可能性があります。ただ、「Looop」のような市場連動型プランや、大手電力会社の固定単価プランなど、ご利用のプランによって影響の出方は異なりますね。気になる方は、資源エネルギー庁の発表や各社の情報をご確認いただければと思います。
――どのようなプランを使用していても、ある程度の影響は出てくるということですね。
はい。その影響が数カ月後に現れるのか、あるいは即時に反映されるのかは、ご利用のプランによって変わってきます。
――「Looop」は今回の情勢を受け、電気代上昇から家計を守るための「緊急支援策」を3月13日に発表されましたが、その背景を教えてください。
今回の報道を受けて、お客さまの不安が大きくなると考えました。少しでも不安を軽減できるよう、「Looop」ならではの支援策をお届けしたいという思いで、3月上旬から準備を進めてきました。
――「緊急支援策」では「3つの自動割引」を実施されていますが、具体的にはどんな内容ですか。
毎月の電気使用量がピークとなる1時間分の料金を割り引く「おまかせ割」(継続提供)、2026年3月使用分に対して1kWhあたり最大1.5円を自動割引する「緊急おたすけ割」、そして電気料金単価が一定水準を超えた時間帯に単価を自動的に引き下げる「おまもりチケット追加版」を用意しました。
――このスピード感には驚きました。複数の部署が連携しないと実現できない取り組みだと思います。
検討開始からプレスリリースの発表まで、約3週間でお届けしました。特にスピードを重視しましたね。「Looop」は市場連動型プランを採用しており、以前から市場変動からお客さまを守る取り組みを進めてきました。「おまかせ割」「おまもりチケット」は既存のサービスであり、それを継続・拡張する形で提供しています。
――消費者にとっても非常に心強い施策ですね。
SNSでも「『Looop』から案内が届いた」という声をいただいており、迅速に対応した意義を感じています。
“10年分の明細”で可視化、渋谷駅広告に込めた狙い

――現在、渋谷駅で「10年分の電気料金明細」をモチーフにした広告を掲出されていますね。
当社のユーザー調査で電気を切り替えたことのない方のなかには不安・手間といった印象を持っている方が一定数いました。また、新電力について知らないままの方も多く、それは非常にもったいないと感じたことが、今回の広告掲出のきっかけです。
――明細を並べるというアイデアはどのように生まれたのでしょうか。
10年間で約1.3倍に上昇した電気料金の変化を、視覚的に実感していただきたいと考えました。そのため、架空の電気料金明細を一枚ずつ制作し、撮影しています。実際の明細に近い質感を意識しました。
――古い明細のくしゃくしゃ感が印象的でした。
時間の経過を感じていただくために、あの質感には特にこだわりました。
――電気は目に見えないからこそ、明細が唯一の接点とも言えますね。
そうですね。現在はアプリで確認するケースも増えていますが、以前は毎月請求書が届くことで電気を実感する機会になっていました。今回の広告が、電気について考えるきっかけになればうれしいです。
――交通広告を選ばれた理由は何でしょうか。
「日常の中で一度立ち止まって考えてほしい」という思いから、多くの方の目に触れる渋谷駅を選びました。
――「一途な人ほど、損しているかも?」というコピーも印象的です。
ここでいう「一途な人」は、2016年の電力自由化以降、一度も電気の見直しをしていない方を指しています。「損しているかも?」と問いかけることで、見直すきっかけになればと考えました。
電力会社のこれからは暮らしを支えるサービスへ
――電力会社はサービスの違いが見えにくいと言われていますが、「Looop」はスピード感や顧客対応を大切にされている印象です。
電力は差別化が難しい商材です。そのため、企業姿勢やサービスの在り方が問われていると考えています。今回の支援策も含め、お客さまの声を起点にしたサービス展開を大切にしています。
――「必ずLooopを選んでください」というわけではないという発信も印象的でした。
お客さまにとって最適な選択が何より重要だと考えています。住んでいる地域や家族構成によって最適なプランは異なりますので、「Looop」を選ぶことが唯一の正解ではありません。ただ、選んでいただけた際には、その期待に応えたいと思っています。
――今後10年、20年で電力会社の役割はどのように変わっていくとお考えですか。
これまでは電力供給が中心でしたが、今後は暮らし全体を支えるサービスへと進化していくと考えています。「Looop」では2025年にスマートホーム事業へ参入し、エネルギーをより賢く使うための取り組みを進めています。
――具体的にはどのようなサービスでしょうか。
現在は法人向けに、AIエージェント搭載IoT機器「ナインドット」を提供しています。家電制御やセキュリティ、各種センサーなどを一体化したデバイスで、「グラモン」というAIに話しかけることで天気やゴミ出し情報なども確認できます。
――それは暮らしが便利になりますね。
今後は電気料金の安い時間帯の活用提案や、EVの自動充電などの機能も追加予定です。生活全体をより快適にすることを目指しています。
――いずれ個人向け展開も期待したいところです。まずは電気代の見直しから始めたいのですが、何から取り組めばよいでしょうか。
各電力会社が提供している料金シミュレーションの活用をおすすめします。電気の使用時間帯や使用量を把握したうえでプランを見直すことで、効率的な電力利用につながります。