「子どもと家族にやさしいクリニック」が描く、医療を軸としたコミュニティデザイン

2024年に開院した「たけうちファミリークリニック」は、子どもとその家族を総合的に支える地域密着型のクリニックだ。院長の竹内雄毅氏は、日本小児外科学会小児外科専門医として高度医療の現場で経験を積んできた医師である。その専門性を背景に、現在は「医療を軸としたコミュニティデザイン」という新たな挑戦に取り組んでいる。

「クリニックの隣に、健康・教育・福祉が自然につながる拠点をつくりたい」。

そう語る竹内氏に、開業の背景と、その先に見据える地域の未来について話を聞いた。

小児外科専門医としての経験が、地域医療へとつながるまで

私は京都で生まれ育ち、幼い頃に診ていただいた開業医の先生に憧れて医師を志しました。京都府立医科大学卒業後は、同大学および兵庫県立こども病院で小児外科医として研鑽を積み、命と真正面から向き合う医療に携わってきました。専門性の高い現場で子どもたちの手術を担当する日々は、大きなやりがいに満ちたものでした。

一方で、結婚し、子どもを授かったことが私の価値観を大きく変えました。忙しさのなかで、わが子の成長の一瞬一瞬を見逃していることに気づいたのです。

「子どものそばで成長を見守りたい」「働く父としての背中を、日常の中で見せたい」

そうした思いが次第に強くなり、開業を決意しました。それは医師としての新たな挑戦であると同時に、父親として、家族との関係を見つめ直す選択でもありました。

開業にあたり目指したのは、「子どもにも、家族にもやさしいクリニック」です。発熱や感染症などの一般小児診療から、軽度外傷への外科処置まで幅広く対応し、保護者の診療も行うことで、家族全体の“かかりつけ医”として機能しています。また、小児在宅医療にも積極的に取り組み、医療的ケアが必要な子どもたちとその家族が、地域で孤立せず暮らせる体制づくりを進めています。

「病気のときだけ行く場所」から、「子どもと一緒に安心して立ち寄れる場所」へ

開業から1年後の2025年4月、クリニックに病児保育室を併設しました。子どもが病気になると、保育園や幼稚園に預けられず、保護者は仕事を休まざるを得ません。身近に頼れる人がいない家庭ほど、その負担は大きくなります。こうした現実を日々の診療の中で目の当たりにし、「医療と子育てをつなぐ仕組み」が不可欠だと感じました。

病児保育室では、保育士と看護師が連携し、安心して過ごせる環境を整えています。利用者からは「安心して預けられる」「仕事を続けられて助かっている」といった声が寄せられ、地域における役割の大きさを実感しています。

さらに、診療の合間の時間を活用し、絵本の読み聞かせ、離乳食教室、ベビーマッサージ、ワンコイン撮影会、季節行事など、地域住民が参加できる子育て支援イベントも開催しています。これらの取り組みは、受診への心理的ハードルを下げるだけでなく、地域との信頼関係を育む土台となっています。

クリニックは「病気のときだけ行く場所」ではなく、「子どもと一緒に、安心して立ち寄れる日常の居場所」であってほしい。その思いが、次の構想へとつながっていきました。

医療・子育て支援一体型で挑む、子どもと家族を支えるコミュニティデザイン

現在、私たちは医療を起点とした「安心して子育てできるコミュニティデザイン」に力を入れています。1日に100人以上の子どもと家族が訪れるクリニックは、地域において大きなエネルギーが集まる場所です。この力を診療の枠内にとどめるのではなく、人と人が出会い、つながり、支え合う場へと広げていきたいと考えました。

そこで進めているのが、クリニック隣接地に整備中の広場プロジェクトです。医療・子育て・学びが自然に交差し、互いに良い影響を与え合う場所。少子高齢化や地域コミュニティの希薄化、子育て世代の孤立といった社会課題に対し、医療単独ではなく「場」として関わる必要があると感じたからです。

医療・子育て・学びが日常の延長線上で交わり、家族同士や地域の人が気負わずに出会える。少子高齢化や地域コミュニティの希薄化といった課題に対し、医療を「点」ではなく「場」としてひらくことで、新しい関係性が生まれるのではないかと考えています。

地域とともに育つ、街のファミリークリニックとして

街のファミリークリニックだからこそできる挑戦があります。診療の質を守りながら、その周囲に人が集い、支え合う土壌をつくること。たけうちファミリークリニックとtPotは、医療を起点に地域の未来を少しずつデザインしていく試みです。これからも、地域とともに育ち続ける存在でありたいと考えています。

たけうちファミリークリニック
https://www.takeuchi-family-cl.com/

院長 竹内雄毅

医学博士・小児外科専門医。京都府精華町「たけうちファミリークリニック」院長。京都府立医科大学小児外科客員講師。小児科・小児外科の診療に加えて、地域の子どもを安心して預けられる病児保育を運営するとともに、さらに絵本の読み聞かせや離乳食教室、ベビーマッサージなどの子育てイベントも展開する。

クリニックを「行きたくない場所」ではなく「行きたくなる場所」に変えることを目指し、医療を軸としたコミュニティデザインに力を注ぐ。現在、家族と地域が互いに支え合える環境作りの一環として、安心して交流できる広場の構想を進めている。