「フレンチフライ」はベルギー発祥だった!? 元大使館シェフが語る“究極のポテト”と日本食との融合

我々が日常的に口にする「フレンチフライ」。その名からフランス発祥と思われがちだが、実はその起源はベルギーにある。現在、ベルギーは加工ポテト製品の輸出において世界トップクラスのシェアを誇り、その品質と革新性で世界の食卓を支えている。
先日、アジア最大級の食品・飲料展示会「FOODEX JAPAN 2026」において、フランドル農産物販売委員会(VLAM)が主催する「ベルギー産ポテト製品 試食会」が開催された。元駐日ベルギー大使館シェフによるデモンストレーションや、ベルギーを代表する輸出企業5社のプレゼンテーションを通じ、ベルギーポテトの真価と日本市場における新たな可能性を探った。
アメリカ兵の勘違いから始まった「フレンチフライ」の歴史

試食会の冒頭、フランドル農産物販売委員会の輸出プロジェクトコーディネーター、ヒルデ・ピーターズ氏はベルギーポテトの起源について語った。
「ベルギーにおけるフライドポテトの歴史は18世紀、南部のナミュール近郊にまで遡る。当時、冬に川が凍りついて小魚が獲れなかった際、人々はジャガイモを魚の形に切り、揚げて食べたのが始まりだ」
では、なぜ「フレンチ」フライと呼ばれるようになったのか。そのきっかけは第一次世界大戦にある。ベルギーに駐留していたアメリカ兵たちがこの揚げたポテトを気に入り、自国へ伝えた。当時のベルギー軍の公用語がフランス語であったため、彼らはそこをフランスだと勘違いし、「フレンチフライ」という名が世界に広まったのだという。
現在、ベルギーにとって日本は、韓国やタイと並び、欧州以外でトップ3に入る極めて重要な市場である。ピーターズ氏は「ベルギーのポテト製品は、伝統的な栽培技術と最新の加工技術の結晶。一口食べればその違いが分かるはずだ」と自信をのぞかせた。
ポテトが“歌う”瞬間。元大使館シェフが伝授する「二度揚げ」の極意

イベントの目玉となったのは、元駐日ベルギー大使館シェフ、バート・サブロン氏による調理デモンストレーションだ。同氏は5年間にわたる大使館での勤務経験を持ち、現在はフリーランスとして世界で活躍する。彼が披露したのは、ベルギー流の「究極のフライドポテト」を作るための黄金ルール、すなわち「二度揚げ」の技術である。
【一回目(150度)】
約2〜3分間揚げる。この段階でジャガイモの芯まで熱を通し、内側を「シルキーで柔らかい」状態に仕上げる。その後、ポテトを油から上げ、10分間ほど休ませるのがポイントだ。
【二回目(175度〜180度)】
油の温度を上げ、再び約3分間揚げる。これによって外側が黄金色に輝き、驚くほどカリッとした食感が生まれる。
バート氏がポテトを再び油に投入すると、軽快で高い音が会場に響き渡った。「ポテトが歌っているような音が聞こえてくるだろう。最高のポテトは、愛を込めて作られるものだ」とバート氏は微笑む。揚がった直後に余分な油をしっかり落とし、ベルギー伝統の「コーン(円錐形の紙容器)」に盛り付ける。そのシンプルな工程の一つひとつに、ベルギー人のポテトに対する矜持が感じられた。
ジャパニーズカレーに「マッシュポテト」という新発想

今回、バート氏が提案したのは、ベルギー産の高品質なポテト製品を日本の家庭料理や外食メニューに組み込む「フュージョン」スタイルだ。
特に注目を集めたのが、「バター薫るマッシュポテトのジャパニーズカレー」である。日本の国民食であるカレーに、ベルギー産の滑らかなマッシュポテトを添え、さらに「ポン酢パール(球状にしたポン酢)」をトッピングした一皿だ。
「ベルギー産のマッシュポテトは、冷凍のまま電子レンジで3分加熱するだけでレストラン品質になる。今回はさらにバターを加え、よりシルキーな質感にした。ここにポン酢の酸味を加えることで、マイルドなカレーに鮮やかなコントラストが生まれる」
実際に試食すると、ジャガイモ本来の濃厚な甘みとカレーのスパイス、そしてポン酢の清涼感が絶妙に調和し、これまでの「フライドポテト=サイドメニュー」という固定観念を覆す主役級の存在感を放っていた。

このほか、ポテトに照り焼き唐揚げを合わせたメニューや、ポテトの上に豚丼風のポークをのせたメニューなど、酒のアテとしても、あるいは満足感のあるランチとしても成立する創造的な料理が紹介された。
世界を支えるベルギーポテトの5大巨頭

会場には、日本市場への展開を強化するベルギーの主要5企業もブースを構え、各社の強みをアピールした。
Agristo: 家族経営ながら世界展開するPB(プライベートブランド)のスペシャリスト。顧客の要望に合わせたカスタマイズに定評がある。
Clarebout: 世界最大級の規模を誇り、35年の歴史を持つ。大規模な供給能力と家族経営の温かさを両立させている。
Pomuni: マッシュポテトや星型などの「スペシャリティ製品」を専門とする。ユニークな形状で子ども向けやパーティー需要に応える。
Ecofrost: 20年以上にわたり日本へ輸出。日本の家庭用冷凍庫のサイズに合わせた500gパックを開発するなど、ローカライズに積極的だ。
GLOBALFRiES!: 世界的な知名度を持つブランド。日本では「シューストリング(7×7mm)」やウェッジカットが人気で、ベルギーポテト本来の味を伝えている。
ポテト大国ベルギーが拓く、日本の食卓の未来

今回の試食会を通じて浮き彫りになったのは、ベルギー産ポテト製品の圧倒的な「利便性」と「品質」の高さである。深刻な人手不足に悩む日本の外食産業において、電子レンジや数分間の揚げ調理でプロの味を再現できる冷凍ポテト製品は、極めて価値の高いソリューションとなるだろう。
「単なるフライドポテト」の枠を超え、日本食との融合や、ベルギービールとの文化的なペアリング。ベルギーポテトがもたらす新しい食体験は、我々の日常をより豊かに、そして刺激的なものにしてくれるに違いない。
FOODEX JAPAN公式サイト:https://foodex.jma.or.jp/