「高齢化は脅威ではなく、可能性」――介護の未来を“納得”へ導く『International KAiGO Festival 2026』
“超高齢社会”に突入した日本。介護を必要とする高齢者に、若い世代ができることとは――?
そんな可能性が集結したのが、2026年2月25日(水)~27日(金)『International KAiGO Festival 2026』です。
「Care Show Japan 2026」の会場内で開催された本イベントでは、介護やシルバーエコノミーの新しいアイデアを発表する場として「KAiGO DESIGN AWARD 2026」も行われ、各部門の優秀賞が発表されました。
超高齢社会の新潮流を感じさせる注目イベントの模様をお伝えします。
『International KAiGO Festival 2026』とは?
内閣府によると、令和7(2025)年度の65歳以上の高齢者が総人口に占める割合は29.3%、75歳以上の「後期高齢者」は16.8%に達します。 こうした中で、介護を必要とする高齢者が増加する一方、少子化による介護者不足も懸念されています。

そこで、クリエイティブの力で“日本の介護”を拡張・強化するプロジェクト「KAiGO PRiDE」が企画したのが、今回の『International KAiGO Festival 2026』です。
イベントには業界のリーダーや起業家、現場の実践者が集まり、トークセッションや関連映画の特別上映を通じて、介護やシルバーエコノミーの新しいアイデアが披露されました。
「KAiGO DESIGN AWARD 2026」授賞式

そんな中で行われていたのが、シルバーエコノミーの可能性を広げるピッチコンテスト「KAiGO DESIGN AWARD 2026」です。特設ステージで、各受賞者の授賞式が行われました。
プロダクトデザイン部門
<ヘルスケア分野>
優秀賞:株式会社 LeAILE『ケアエムショーツ』
最優秀賞:WHILL株式会社『WHILL Model R』
<介護分野>
優秀賞:こうのふく『キルキセキ』
最優秀賞:牛乳石鹸共進社株式会社『SUSUGU(ススグ)』
ビジネスアイデア部門
優秀賞:エルアップシステム株式会社『居宅でプラス』
最優秀賞:三和厨房株式会社『テーブルコーデ』
AI部門
優秀賞:株式会社最中屋『ミタスト for Care Plan』
最優秀賞:パナソニック エンターテインメント&コミュニケーション株式会社『NICOBO(ニコボ)』

クリエイティブコンテンツ部門
優秀賞:橘田龍馬『共に歩んできた愛の絆』
最優秀賞:戸谷良和『幸せな一日』
スタートアップ特別賞
集孝博(レンタル孫 代表) 『レンタル孫の可能性』
マイスキュー大賞
エルアップシステム株式会社『居宅でプラス』

発表後、協賛企業のイオンリテール株式会社 MySCUE事業部 事業部長の駒井一郎氏が、審査員を代表して総評を述べました。
駒井氏は、仙台・福岡・東京での審査経験を振り返り、「毎回、学びの連続だった」とコメント。受賞者が提示した課題と解決策の明確さを高く評価しました。
また、第2回となる今回は、参加者の半数以上が介護関連業者以外だったと明示。異業種の視点が加わることで、同アワードの「介護やシルバーエコノミーに新たな発想をもたらす場」としての意義を示しました。

そして駒井氏は最後に「今後も第3回、第4回……第10回と、アワードを通じて参加者と顧客をつなぐプラットフォームとしての役割を果たしていきたい」と締めくくりました。
“高齢化は脅威ではなく、可能性”――マンジョット氏が語る介護の未来

授賞式に引き続き、「KAiGO PRiDE」の代表理事を務めるマンジョット・ベディ氏と理事の小口氏が登壇。まずマンジョット氏が、イベント期間中の出会いに感謝を述べるとともに、超高齢社会に直面する日本の介護のあり方について持論を語りました。
「介護は国が税金で行うもの――そんな先入観で私たちは目をそらしてきました。しかし、この考えは大間違い。人は誰もが必ず年を取ります。だからこそ大切なのは、最後までどう自分らしく生きるか。私はクリエイティブの力で“日本の介護”の未来を支えていきたいと考えます」
日本で38年もの間、クリエイティブ業界で活動してきたマンジョット氏。これまでプロジェクトを通じて、映像やファッション、空間表現が介護にどのような“幸福感”をもたらせるのかを探ってきました。

「10年間にわたり全国の介護職の方たちのポートレートを撮り続ける中で、ひとつの気づきがありました。そこにひとりひとりの思いや魅力を1行の言葉にのせるだけで、人の心を揺さぶる作品になる。クリエイティブの力が、介護ブランディングを広げるきっかけになるのです」
こうした“気づき”をどのように社会へ広げていくのか――。マンジョット氏は、その広がり方を水面に広がる波紋に例えます。
「何かを始める時は、中心から広げていかなければなりません。石を水に投げると、波紋は必ず真ん中から外へと広がっていく。外側から中心へは、決して広がらないのです。
では、介護における“中心”とは何か。それは、現場で働く一人ひとりの心だと私は思います」

こうした理念を、現実の社会構造や制度の中でどう実装していくのか。具体的な課題と可能性について、小口氏はこう補足します。
小口氏は、「2040年には約57万人の介護人材が不足する」と現状を指摘。「今までのシステムは、新しくならなければ成り立たない」と制度の限界に言及しました。
また、「働きながら家族の介護に関わる人による経済損失は約9兆円」とする一方、「高齢者マーケットは2030年に100兆円規模へ広がる可能性がある」と示唆。社会課題であると同時に、大きな可能性を秘めた分野であることが浮かび上がります。
そして「制度があっても人が動かなければ変わらない。仕組みは器であり、命を吹き込むのは人の感情と共感です」と強調し、エコシステム形成の重要性を訴えました。

こうした課題提起を受け、マンジョット氏は改めて次のように語り、日本の介護の未来に期待を寄せました。
「少子化や高齢化が加速する中で、介護への向き合い方を“負担”ではなく“可能性”へと価値転換していくことが重要です。そのために必要なのが、クリエイティブの力です。
クリエイティブの発想や提案力を信じて継続すれば、人の気持ちは必ず動きます。作品がもたらす“気づき”があってこそ、それは“説得”ではなく“納得”へと変わる。私たちは、日本の介護を、そんな未来へと変えていきたいと考えています」
クリエイティブが変える、日本の介護の未来

先入観にとらわれず、日本の介護を新たな創造のフィールドへと転換していく。これこそが「KAiGO PRiDE」の理念の根幹といえるのでしょう。
クリエイティブの力が日本の介護の未来にどんな変化をもたらすのか。その歩みに、今後も注目が集まりそうです。
「KAiGO PRiDE」公式サイト:https://kaigopride.jp/
<取材・撮影・文/櫻井れき>