累計800万枚の服が繋ぐ、難民支援の輪。学生たちの情熱が世界を変える「“届けよう、服のチカラ”プロジェクト アワード 2025」

2026年2月12日、上野・国立科学博物館にて、次世代を担う子どもたちの情熱が世界へと解き放たれた。株式会社ファーストリテイリングが主催する「“届けよう、服のチカラ”プロジェクト アワード 2025」だ。
全国769校、約7万人の児童・生徒が参加した今年度の活動の集大成として、事前の書類審査を勝ち抜いた優秀校6校が集結。難民問題という巨大な国際課題に対し、彼らがどのように「自分事」として向き合い、地域を巻き込んでいったのか。
教育的・文化的価値の高い会場で繰り広げられた、熱きプレゼンテーションの模様を詳報する。
世界を救う「Life Wear」の力。プロジェクトが目指すもの

「“届けよう、服のチカラ”プロジェクト」は、ファーストリテイリングがUNHCR(国連難民高等弁務官事務所)と協働し、2013年から展開している学校連携型のSDGs学習プログラムだ。その仕組みはシンプルかつ力強い。小・中・高校生が主体となり、着なくなった子ども服を回収し、慢性的な服不足に悩む難民キャンプへ届けるというものだ。

しかし、この活動の本質は「寄付」だけではない。子どもたちが難民問題やSDGsの現状を自ら学び、地域社会に働きかけて実行に移す「探究学習」のプロセスにこそ価値がある。プロジェクト開始から13年目を迎えた現在、累計参加校は5,800校を超え、回収された服は累計800万枚に達した。
創意工夫が光るプレゼンテーション。6校が語る「私たちの物語」
アワードの舞台に立った6校の発表は、どれも大人顔負けの分析力と行動力に満ちていた。

トップバッターの洛南高等学校附属中学校(京都)は、小中高一貫の強みを活かし、全66クラスを直接訪問。
園児向けには「服の妖精」パペットを用いるなど、相手に合わせたコミュニケーションで「共感」の輪を広げた。

続く和歌山県立和歌山盲学校(和歌山)の発表には、会場が静かな感動に包まれた。
視覚障害を持つ生徒たちが「同じ境遇の難民の子を助けたい」と立ち上がり、触覚で色がわかる「いろぽち」タグを全227着に装着。GU店舗で美しい畳み方を学ぶなど、受け取る側の尊厳を第一に考えた活動は、まさにSDGsの精神を体現していた。

長岡市立宮内小学校(新潟)は、3年間にわたる活動の変遷をオンラインで報告。
地域店舗約60軒にポスターを掲示し、自分たちで育てた米の収益金を寄付に充てるなど、活動を多角化。目標を大きく上回る5,707枚を回収し、地域の誇りを世界へ繋げた。

就実小学校(岡山)は、1年生から6年生が協力する異学年チームで挑戦。
地域から届いた温かい手紙を紹介し、「服を渡す側も笑顔になれる」という双方向の繋がりの尊さを説いた。

新潟県立村上桜ヶ丘高等学校(新潟)は、回収対象外の大人の服を「ファブリックリース」へリメイクするアップサイクルを提案。
SNSや地元紙を活用した戦略的なPRで、高校生ならではの影響力を発揮した。

最後を飾った東京都立小平南高等学校(東京)は、1年生283名全員で挑む大規模な組織力が圧巻だった。
近隣11施設を巻き込み、当初目標の約8倍となる約13,500着を回収。「自分たちもやればできる」という自信が、生徒たちの顔に溢れていた。
難民の背景を持つゲスト、サンさんが語る「服、そして人生」

審査員による厳正な審査が行われる間、会場ではトークセッションが開催された。登壇したのは、難民の背景を持ち現在はユニクロのスタッフとして活躍するニン・サン・ホイさん(以下、サンさん)だ。
8年前に来日した当初、言葉の壁に苦しんだ彼女を救ったのは、職場の仲間たちの温かなサポートだった。サンさんは、ユニクロの掲げるコンセプト「Life Wear」に触れ、「服は単に体を守るだけでなく、生活や人生、そして未来そのものを支えるもの」と語った。

「皆さんが集めた一着一着が、難民キャンプの子どもたちにとって、新しい人生を歩むための『希望』になります」。自身の経験に裏打ちされたその言葉は、活動を終えたばかりの学生たちの心に深く刻まれたようだった。
史上初のダブル受賞が示す「質の向上」

いよいよ結果発表。審査員を務めた東京大学の北村友人教授は、「どの学校も甲乙つけがたい。これまでで最も難しい審査だった」と総評を述べた。

栄えある最優秀賞に輝いたのは、長岡市立宮内小学校と東京都立小平南高等学校の2校。アワード史上初となる、小学校と高校のダブル受賞となった。宮内小の「地域を巻き込む情熱」と、小平南高の「圧倒的な組織力と探究心」が、甲乙つけがたい高評価を得た結果だ。

また、UNHCR特別賞には、地域イベントへの積極的な参加とクリエイティブなリメイク活動が評価された新潟県立村上桜ヶ丘高等学校が選出された。このプロジェクトが単なる「学習」を超え、人生を変える「原体験」になったことを物語っているかのような授賞式だった。
一着の服から始まる、新しい未来

「届けよう、服のチカラ」プロジェクト アワード 2025は、学生たちの「当事者意識」が社会を動かす大きなエネルギーになることを証明した。一着の不要になった服が、子どもたちの手を通じて世界を救う物資へと変わり、同時に日本国内の地域コミュニティを活性化させ、子どもたちの自信を育んでいる。
この活動は、ここで終わりではない。今回得た知見や繋がりは、後輩たちへと引き継がれ、さらに強固なものとなっていく。一着の服に込められた「チカラ」が、これからどのような未来を創っていくのか。若き社会貢献者たちの次なる一歩に、大いなる期待を寄せずにはいられない。
‟届けよう、服のチカラ”プロジェクト公式サイト:https://www.uniqlo.com/jp/ja/special-feature/sustainability