生成AI時代に求められる人材とは?熊本高専で語られた学びとキャリアの考え方

生成AIが急速に広がる一方で、「将来どんな力を身につければいいのか分からない」と感じている学生や若い世代は少なくありません。AIは便利な技術として注目されていますが、同時に“安全に使いこなす力”や、自分なりの学び方・働き方を考える姿勢も、これまで以上に重要になっています。

こうした中、熊本県の高等専門学校で、AIやスタートアップ、キャリアをテーマにした特別な授業が行われました。扱われたのは、難解な専門技術の話だけではなく、生成AI時代にどのように学び、どんな選択肢を持って社会に出ていくのかという、より現実的な問いです。

IT業界では人材不足が続き、特にAIやセキュリティ分野では「使える人」そのものが足りていない状況が続いています。今回の取り組みは、そうした課題を背景に、次の時代を担う学生たちが将来について考えるきっかけとして注目される内容でした。

生成AIが広がる一方で深刻化するIT人材不足

生成AIの普及によって、AIは一部の専門家だけのものではなくなり、誰もが使える技術へと変わりつつあります。その一方で、AIやITを現場で活用できる人材は、将来に向けて大きく不足すると見込まれています。特に、AIやロボットを使いこなす人材は今後数百万人規模で足りなくなるとされ、企業側も強い危機感を抱いている状況です。

なかでも課題として挙げられることが多いのが、セキュリティ分野です。AIは便利である反面、使い方を誤れば情報漏えいや不正利用といったリスクも伴います。そのため、単に技術を「使える」だけでなく、「安全に使いこなせる」人材が強く求められています。

こうした状況は、これから進路を考える学生にとっても無関係ではありません。AIが当たり前になる時代だからこそ、何を学び、どんな力を身につけるべきかを早い段階から考える必要性が高まっています。

技術を覚えるだけでは通用しない時代の学び方

AIやIT分野というと、高度な専門知識や最新技術をどれだけ身につけられるかが重要だと思われがちです。しかし、生成AIの進化によって、技術そのものを「覚える」ことの価値は、以前とは少しずつ変わってきています。必要なのは、技術をどう使い、どう社会に役立てていくかを考え続ける力です。

実際のITの現場では、正解が一つに決まっている仕事ばかりではありません。状況に応じて学び直し、選択し、判断していく姿勢が求められています。そのため、資格や学歴といった分かりやすい指標だけで将来が決まるわけではなく、自分なりの軸を持って学び続けられるかどうかが、大きな意味を持つようになっています。

こうした変化は、学生にとって進路選択を難しくする一方で、可能性を広げる側面もあります。企業で働く、スタートアップに関わる、地方からITで価値を生み出すなど、選択肢は以前よりも多様化しています。生成AI時代の学びとは、技術を身につけることと同時に、自分自身の将来像を考え続けることでもあると言えそうです。

熊本高専で行われた「AI×キャリア」を考える特別授業

こうした背景を踏まえ、熊本県の高等専門学校では、生成AI時代の学び方や働き方をテーマにした特別授業が行われました。舞台となったのは、情報通信分野を学ぶ学生が集まる学科で、AIやセキュリティといった分野を切り口に、将来のキャリアについて考える時間が設けられました。

この授業の特徴は、特定の技術を一方的に教える形式ではなかった点です。AIやIT業界の現場で求められている考え方や、仕事の進め方、キャリアの選択肢などについて、学生との対話を重ねながら進められました。生成AIが普及する中で、どのように学び続けるべきか、どんな姿勢が将来につながるのかといったテーマが共有されています。

技術の話題にとどまらず、働き方や進路に関する質問も多く取り上げられたことから、学生側の関心が「スキル習得」だけでなく、「その先の生き方」に向いていることもうかがえます。AIを学ぶことと、自分の将来をどう結びつけるかを考える場として、印象的な取り組みだったと言えるでしょう。

実務の視点が学生にもたらすリアルな気づき

AIやITを学ぶ場では、どうしても教科書やカリキュラム中心の知識に触れる機会が多くなります。一方で、実際の現場では、技術そのもの以上に「どう考え、どう選択するか」が問われる場面が少なくありません。今回のように、実務に携わる立場から語られる話は、学生にとってそうした現実を知る貴重な機会になります。

AIやセキュリティの分野では、技術の進化が速く、数年後の正解が見えにくいことも珍しくありません。そのため、すべてを学校で学び切ることは難しく、社会に出てからも学び続ける姿勢が欠かせない分野だと言えます。実務の視点に触れることで、学生が「今何を学ぶべきか」「将来どんな力が必要になるのか」を具体的に考えるきっかけになります。

また、企業と教育現場が接点を持つことで、学生側だけでなく、社会全体にとっても人材育成の流れが見えやすくなります。AI時代に必要とされる力を、早い段階から意識できる環境づくりは、今後さらに重要性を増していきそうです。

生成AI時代に求められるのは「正解」よりも自分なりの軸

生成AIの進化によって、ITやAIの世界はこれまで以上に変化のスピードを増しています。どんな技術が主流になるのか、どんな働き方が正解なのかを、あらかじめ決め打ちすることは難しい時代です。だからこそ重要になるのは、「これをやれば安心」という答えを探すことよりも、自分なりの考え方や判断軸を持ち続けることなのかもしれません。

今回の熊本高専での取り組みは、AIやセキュリティといった専門分野を入り口にしながら、学生一人ひとりが将来を考えるきっかけを提供するものでした。技術を学ぶことと、自分のキャリアや生き方を結びつけて考える姿勢は、生成AI時代を生きるうえで欠かせない要素と言えそうです。

AIが身近になるほど、人にしかできない判断や選択の価値は高まっていきます。学び続ける姿勢と、自分なりの判断基準を持つことが、変化の大きい時代を前向きに進む力になるのではないでしょうか。