「ハリー・ポッターと呪いの子」マクゴナガルからハーマイオニーへ ロンドンで受け継がれる物語

ロンドン──。言わずと知れた「ハリー・ポッター」の物語の舞台。
この地を訪れたのは、舞台『ハリー・ポッターと呪いの子』でマクゴナガル校長を演じてきた榊原郁恵さんと高橋ひとみさん。そして7月から新たにハーマイオニー役として舞台に加わる松井玲奈さんの3人です。

旅の目的はひとつ。シリーズの“原点”を見つめ直しながら、自身の役柄と改めて向き合うこと。キングス・クロス駅、レドンホール・マーケット、オックスフォード大学クライストチャーチ・カレッジ──。映画や原作に登場した数々の名所を実際に巡り、作品の世界に没入していく3人の姿は、まるで物語の中の登場人物そのもののよう。

ロンドンでの舞台観劇やキャストとの交流を通して、彼女たちはどんな思いを胸に次のステージへ向かったのでしょうか。
その旅の様子は、現在公開中の密着ムービーでも見ることができます。3人が見た風景と、胸に抱いた“魔法”の感触を、少しだけ覗いてみませんか。

卒業とデビューの狭間で 魔法の故郷へ

舞台『ハリー・ポッターと呪いの子』は、今年7月に日本公演4年目に突入します。そんな節目のタイミングで、長く作品を支えてきたマクゴナガル校長役の榊原郁恵さんと高橋ひとみさんが、6月末での卒業を前にイギリス・ロンドンを訪れました。
旅には、7月から新たにハーマイオニー・グレンジャー役として舞台に加わる松井玲奈さんも合流。バトンを受け取る立場として、ロンドン公演の観劇や現地キャストとの交流を通じて、作品とより深く向き合う機会となりました。
3人が歩んできたそれぞれの時間と、これから始まる新たなステージ。その“節目”を感じるロンドンへの旅は、シリーズの原点を辿ると同時に、舞台そのものが持つ長い歴史の一部として、印象的なものになったようです。

映画と現実が重なる場所で 心がほどけた一日

榊原郁恵さんと高橋ひとみさんがロンドンでまず向かったのは、ハリー・ポッターの物語に登場するロケ地の数々。中でも「9と3/4番線」で知られるキングス・クロス駅は、ファンにとって特別な意味を持つ場所です。カートを押して柱に入るフォトスポットでは、グリフィンドールとスリザリンのマフラーを巻いて記念撮影を楽しむ様子も印象的でした。
その後も、ダイアゴン横丁の撮影地として知られるレドンホール・マーケット、そしてホグワーツ魔法魔術学校の大広間のモデルになったオックスフォード大学クライストチャーチ・カレッジなど、物語の“聖地”を次々と巡っていきます。
観光地としてのにぎわいの中に、作品の空気感がそのまま残るこれらの場所は、役を演じてきた2人にとっても深い実感と重なったようです。「本当に映画の中に入ったみたい」と語る表情からは、舞台上では見せない素の感動がにじんでいました。

“観る”から“感じる”へ ロンドンの舞台が教えてくれたこと

ロンドン・パレスシアターで上演中の『ハリー・ポッターと呪いの子』本国公演を、3人は揃って観劇しました。日本版では一部と二部をまとめた短縮バージョンで上演されていますが、ロンドンでは約5時間におよぶフルバージョン。会場全体が魔法に包まれたような演出と、観客の感情の乗った反応に、3人は強く心を動かされたようです。

特に印象的だったのは、観客と舞台の距離の近さ。リアクションの豊かさや空気感の一体感は、日本の公演とはまた違った魅力があったと語っています。テンポの早い展開や場面転換の多さも、本場ならではの流れとして受け止められ、これまでとは違った視点で自分たちの舞台を見直すきっかけにもなったようです。

劇場内には、物語と連動して変化する装飾や多彩なグッズ売り場も設けられており、演劇という枠を超えて“魔法の世界に入り込む”ような体験が随所に詰め込まれていました。観客として味わう魔法は、演じる側にとっても新たな刺激となっていたようです。

役を超えてつながる想い 国境を越えたマクゴナガルとハーマイオニーの会話

舞台観劇の翌日、3人はロンドン版のキャストと舞台裏で対面しました。マクゴナガル校長役のデブラ・ローレンスさん、ハーマイオニー役のナナ・アジェイ=アンパドゥさんとの交流では、同じ役を演じる者同士としての共感があふれる会話が交わされました。

「私はマクゴナガルを愛している」と語るデブラさんの言葉には、役への深い理解と誇りが滲み、これまでその役を大切に演じてきた榊原さんと高橋さんも、静かにうなずいていたようです。「マクゴナガルが一番恐れているのはヴォルデモートの復活。でも、ハーマイオニーが一番恐れているのはマクゴナガルに怒られることよ」という冗談まじりのやりとりも、空気を和ませながら互いの役を慈しむ気持ちが感じられる瞬間でした。

松井玲奈さんは「7月からハーマイオニー役で出演します」と伝えると、ナナさんは「私も始めたばかり。すべてがあなたを守ってくれるから大丈夫」とあたたかな言葉を贈っていました。
贈り物として手拭いを渡すと、現地キャストも笑顔で受け取り、言葉や文化を超えた絆のようなものが、その場に静かに広がっていったようです。

受け継ぐ覚悟と、自分らしい一歩 松井玲奈が見つめる新しい舞台

松井玲奈さん

長くマクゴナガル校長役を演じてきた榊原郁恵さんと高橋ひとみさんが6月で卒業し、7月からは松井玲奈さんがハーマイオニー・グレンジャー役として新たに舞台に参加します。

初参加となる松井さんは、過去の演出や先輩キャストの存在が大きなプレッシャーであることを率直に語りつつも、「自分なりのハーマイオニーを届けたい」と力強く意欲を見せました。長く愛されてきた役を演じるからこそ、模倣ではなく、自分らしい表現が求められること。その責任感の大きさに真正面から向き合おうとする姿勢が印象的です。

一方、卒業を迎える2人にとってもこのタイミングは特別なものだったようです。高橋さんは「普通に“校長先生”って呼ばれていた」と笑いながらも、舞台を支えてきた3年間をしみじみと振り返り、榊原さんも「衣裳が保管されていると聞いて安心した」と舞台への深い愛着を滲ませました。
松井さんが次のステージへと踏み出す一方で、2人が見守るその姿には、単なるキャスト交代を超えた“物語の継承”のような空気が感じられます。

“魔法”は終わらない 次の舞台へつながる旅の記録

【ロンドン旅】舞台ハリポタのキャストが、ハリー・ポッターの聖地ロンドンへ!

キャスト3人が歩んだロンドンの旅路は、ただの観光ではなく、“役を生きる”という仕事の中で積み上げてきた時間と経験を、あらためて自分の中に刻み込むような特別な体験だったのかもしれません。
本場の空気に触れ、現地キャストと心を交わしながら、新たな一歩を踏み出す『ハリー・ポッターと呪いの子』の日本公演。ロングラン4年目を迎える今もなお、物語は生き続け、見る人の心を動かし続けています。

東京・TBS赤坂ACTシアターで上演中のこの作品は、キャスト交代や演出の変化を経ながら進化を重ねています。次のバトンを受け取る新キャストたちがどんな“魔法”を見せてくれるのか──。その期待もまた、観る側の楽しみのひとつになりそうです。

受け継がれる魔法のバトン 舞台はこれからも続いていく

ロンドンの空の下で、それぞれが見つめた景色や胸に抱いた想いは、舞台という日常とは異なる空間に、確かな息吹を与えてくれたようです。
旅の中で交わされた言葉や笑顔からは、役を超えた絆とリスペクトが感じられました。
キャストが変わっても、作品が伝えようとする核は揺らぐことなく、むしろそこに新たな深みや色彩が加わっていく。舞台『ハリー・ポッターと呪いの子』は、そうした“生き続ける物語”として、これからも観る人の心に魔法を届けてくれるはずです。
次のページをめくるように始まる新しいシーズン。観劇を通じて、あなただけの魔法の瞬間に出会えるかもしれません。


舞台『ハリー・ポッターと呪いの子』公演概要

[日程]上演中~2025年10月31日(金)
[会場]TBS赤坂ACTシアター
[上演時間]3時間40分 ※休憩あり

【公式Webサイト】https://www.harrypotter-stage.jp