従来の空冷方式だけでは足りない?AIデータセンターを支える液浸冷却の現在地を160人超が秋葉原で共有
生成AIの活用が広がるにつれ、その処理を支えるAIデータセンターの存在感も高まっています。一方、高性能なGPUやCPUを大量に稼働させる施設では、膨大な電力を使うだけでなく、機器から発生する熱をいかに抑えるかが大きな課題です。従来の空冷方式だけでは、十分な冷却が難しい場面も増えつつあります。
「性能を高めながら、安定して機器を動かすにはどうすればよいのか」。その選択肢として注目されているのが、コンピューター機器を専用の液体に浸して冷やす「液浸冷却」です。株式会社イオレとWOODMAN株式会社は2026年9月16日、東京・秋葉原で「液浸冷却ソリューションカンファレンス」を開催しました。当日はAIデータセンターに関わる企業関係者160人超が参加し、専門家による講演や実機展示を通じて次世代の冷却技術を考えました。
AIの普及とともに深刻さを増す「熱」の課題
生成AIを動かすAIデータセンターでは、大量の計算を同時に処理するGPUが数多く使われています。GPUや、コンピューター全体を制御するCPUの性能が向上する一方で、消費電力や発熱量も増加しています。
一般的なデータセンターでは、ファンなどを使って機器を冷やす空冷方式が広く採用されてきました。しかし、高性能な機器が密集する環境では、空気による冷却だけでは対応しにくいケースもあります。こうした背景から、絶縁性を備えた液体へ機器を浸し、熱を直接取り除く液浸冷却への関心が高まっています。
今回のカンファレンスには、データセンター事業者をはじめ、システムインテグレーターや不動産デベロッパーなど、さまざまな立場の関係者が集まりました。冷却設備だけにとどまらず、建物や運用を含めた幅広い視点から意見を交わせる場となりました。
研究・技術・不動産の視点が交わる各セッション

カンファレンスは、日本液浸ソリューションコンソーシアム代表理事で、山口東京理科大学教授の結城和久氏による基調講演から始まりました。
続いてWOODMANの代表取締役・小野慎二郎氏と、テクノロジー開発本部 製造・品質マネージャーの帖佐義隆氏が、液浸ソリューションの新ブランド「IMMERSIA(イマーシア)」を発表しました。
イオレの代表取締役社長兼CEO・瀧野諭吾氏は「AIインフラ事業から見る液浸冷却の可能性」をテーマに講演。さらに、野村不動産株式会社のインフラ・インダストリー事業本部 事業部副部長・宮地伸史郎氏も、不動産事業者から見た液浸ソリューションの可能性について話しました。
異なる分野の専門家が登壇したことで、液浸冷却を単独の機器や設備としてではなく、AIインフラ全体に関わる技術として考える機会になったといえそうです。
「IMMERSIA EDGE」の実機で触れる液浸冷却

会場には、AIデータセンターや液浸技術に関係する企業の展示ブースも設けられました。ENEOS株式会社とカストロールインターナショナル株式会社が出展し、SNAFTY株式会社の技術協力によるAIシステムの実演も行われました。
なかでも関心を集めたのが、液浸ソリューション「IMMERSIA EDGE(イマーシア・エッジ)」の実機展示とデモンストレーションです。説明や資料だけではイメージしにくい液浸冷却の仕組みを、実際の装置を通じて確認できる機会となりました。
イオレとWOODMANは、Lubricants UK Limited(Castrol)と協業し、「IMMERSIA」の導入推進や事業開発に取り組んでいます。今後は導入を検討する企業との連携やパートナーシップ、共同投資などにもつなげていく方針です。
玉木雄一郎氏も語ったAIデータセンターの重要性

当日は、国民民主党代表の玉木雄一郎氏もゲストとして登壇しました。玉木氏は日本におけるAIデータセンターの重要性などについてスピーチしたほか、会場内の展示ブースを見学。「IMMERSIA EDGE」の説明も受けました。
AIデータセンターは、生成AIをはじめとするデジタルサービスを支える基盤です。その安定運用に必要な冷却技術が、企業や研究者だけでなく、政策に関わる立場からも関心を集めていることがうかがえます。
AIインフラの未来を支える冷却技術という視点
生成AIが身近なサービスへ組み込まれるほど、その裏側では大量の計算処理が行われます。利用者が普段目にする機会は少ないものの、機器から生じる熱を安全かつ効率的に処理することは、AIを安定して使い続けるための重要な条件です。
今回のカンファレンスでは、技術開発、データセンター運営、不動産、エネルギーなど、それぞれの分野に関わる人々が液浸冷却を共通のテーマとして集まりました。160人を超える参加者数からも、熱対策が一部の技術者だけの課題ではなくなっていることが見えてきます。実機展示を交えて技術を具体的に伝えた点も、導入後の姿を考えるうえで印象的です。液浸冷却がどのような施設で活用され、国内のAIインフラをどこまで支えていくのか、今後の展開が気になるところです。