「違いを認め合う大切さ」を親子で考える絵本『かしこいねこと100にんのおうさま』
「みんなと同じ」であることに安心する一方で、自分とは違う考え方に戸惑うこともある。学校や家庭、日々の人間関係の中では、周囲に合わせることが求められる場面も少なくない。しかし、本当に大切なのは、誰もが同じ考えを持つことではなく、それぞれの違いに目を向け、相手の気持ちを想像することなのかもしれない。
そんな身近でありながら奥深いテーマを、王様と一匹のねこの物語を通して描いた絵本が登場する。現役医師であり、小学生の父でもあるヒロミツ氏による『かしこいねこと100にんのおうさま』が、2026年8月1日に文芸社から発売された。本作は、第29回文芸社えほん大賞の絵本部門で優秀賞を受賞した作品だ。かわいらしいイラストと親しみやすい物語の中に、子どもだけでなく大人も立ち止まって考えたくなるメッセージが込められている。
第29回文芸社えほん大賞の絵本部門で優秀賞を受賞した新作絵本

『かしこいねこと100にんのおうさま』で描かれているのは、「相手の気持ちを考えること」「違いを認め合うこと」「自分だけが正しいと思い込まないこと」の大切さである。さらに、自分の姿を振り返り、間違いに気づいて変わることの素晴らしさや、相手を直接責めるのではなく、本人が自ら気づけるように促す賢さも物語に織り込まれている。誰かに答えを押しつけるのではなく、登場人物たちの姿を通して、読み手自身が考えられる内容となっている。
文章はすべて平仮名で書かれており、小さな子どもでも読み進めやすい。色鮮やかで素朴なタッチのイラストも親しみやすく、読み聞かせはもちろん、文字を覚え始めた子どもが自分で読む絵本としても楽しめそうだ。
難しく感じられがちな「違い」や「相手を尊重すること」といったテーマを、子どもにも伝わりやすい形で表現している点が、本作の大きな特徴である。親子で同じ物語を読みながら、それぞれが感じたことを言葉にするきっかけにもなる一冊だ。
読者の感想から見える、王様とねこの物語
本作を読んだ人からは、物語の展開や込められたメッセージ、親子で楽しめる読み方について、次のような感想が寄せられている。
《感想1》
「みんな同じ」であることを求める王様の国が舞台。
でも、みんなが同じ考え方や行動をするようになると、国は思わぬ方向へ。
そんな中、一匹の賢いねこが王様に本当に大切なことを教えてくれます。
読んでいて印象に残ったのは、「違うことは悪いことじゃない」というメッセージ。
相手の気持ちを考えることや違いを認め合うこと、自分だけが正しいと思い込まないこと。
子どもにも分かりやすく描かれていて、 読み聞かせのあとに「どう思った?」と自然に会話が広がると思いました!
こんな時代だからこそ子どもに考えて欲しいことが詰まっている気がします。
《感想2》
読み終えたあと、思わず親の方が考えさせられました。
『かしこいねこと100にんのおうさま』は、ワガママな王様の前に現れた、一匹のかしこいねこのお話。
ねこの提案で、国民みんなが王様と同じようにワガママになってしまい…
王様は自分の悪かった部分に気付き、心を入れ替えて「めでたし、めでたし」と思いきや、ここで終わらないまさかの展開にびっくり!
今までの絵本にあまりない、右に行ったり左にいったり会話形式で読み進めるのも楽しい。
可愛い絵柄で子どもも大人も、それぞれの視点で楽しめる一冊でした。
《感想3》
「力や地位がある人が一番賢いわけではない」というメッセージを与えてくれる本。
「みんな違っていい。」
当たり前のことなのに、毎日を生きていると、つい忘れそうになります。
学校などでは、同じように考え、同じように答えることが求められる場面も少なくありません。
でも、本当の「賢さ」って一つじゃない。
人と違う発想ができる人。優しく寄り添える人。コツコツ続けられる人………
それぞれに、その人だけの価値がある。
子どもたちには、「みんなと同じ」ではなく、「自分らしくていい」と伝えられる大人でいたい。
そんなことを考えました。
感想からは、王様とねこの物語そのものの面白さに加え、読み終えたあとに子どもと大人がそれぞれの立場から考えられる点が、本作の魅力として受け止められていることが分かる。会話形式で進む誌面の構成も、一般的な絵本とは少し異なる読み心地につながっているようだ。
父親としての読み聞かせが制作のきっかけに
著者のヒロミツ氏は、大阪市に暮らす現役医師であり、小学生の子どもを育てる父親でもある。子どもが幼稚園に通っていた頃から読み聞かせを続ける中で、絵本は物語を楽しむだけでなく、大人と子どもをつなぐ大切なコミュニケーションツールであると感じるようになったという。
本作を制作するきっかけの一つとなったのが、世界各地で続く戦争や紛争、力を振りかざしてルールを破る人々の姿など、日々伝えられる社会の出来事である。そうした情報に触れた子どもから、さまざまな質問を受ける中で、心が育つ多感な時期に何を伝えられるのかを考えるようになった。
医療の現場では、異なる職種や専門性を持つ人々が互いを尊重し、協力しながら患者を支えている。また、父親として関わる学校活動でも、立場や考え方の違う人たちが力を合わせる姿を目にしてきた。そうした経験から感じた、多様な人々が互いの違いを受け入れ、誰か一人の利益ではなく、周囲のために助け合うことの素晴らしさ。その思いが、王様とねこの物語へとつながっている。
<書籍概要>
書籍名:かしこいねこと100にんのおうさま
著者:ヒロミツ
発売日:2026年8月1日
出版社:文芸社
体裁:28ページ
価格:1,320円
URL:https://www.bungeisha.co.jp/bookinfo/detail/978-4-286-27891-9.jsp
親子で「みんな違っていい」を考えるきっかけに
「みんな違っていい」という言葉は、よく耳にするからこそ、その意味を改めて考える機会は意外と少ない。自分とは異なる考え方に出会ったとき、すぐに否定するのではなく、まず相手の気持ちに耳を傾けてみる。間違いに気づいたときには、素直に振り返り、行動を変えてみる。本作は、そんな日々の中で大切にしたい姿勢を、親しみやすい物語でそっと伝えている。
子どもがどの場面に心を動かされ、大人はどの言葉に立ち止まるのか。読み終えたあとに感じたことを親子で話し合う時間まで含めて、楽しみたい一冊である。