3人に1人が失敗する「親への終活トーク」 死後の備えではなく「防災」が鍵
実家の玄関を開けた瞬間、思っていたより物が増えていることに気づく。年に一度か二度しか帰らない実家だからこそ、変化には敏感になる。お盆は、離れて暮らす親の暮らしぶりや実家の備えを見直す、数少ないタイミングでもある。
とはいえ、親に対して「将来のこと」やお金にまつわる話を切り出すのは、なかなか勇気がいるものだ。高齢化が進む中で、急な入院や介護、さらには突然の災害に備えて資産や重要書類の保管状況を把握しておく重要性は増しているとわかっていても、なかなか言い出せない。
マスターロック・セントリー日本株式会社(MLSJ社)が実施した『高齢の親の防災&終活』調査によると、親に終活や相続、重要書類の整理について話そうとしてうまくいかなかった経験がある人は、全体で28.2%(子ども世代では33.9%)にのぼった。理由として最も多かったのは、子ども世代で見ると「まだ早いと言われた」(44.4%)、次いで「不機嫌になられた」(29.7%)だ。


「終活」という言葉が持つ重さ
なぜ、親への終活トークはこれほど難しいのだろうか。
終活という言葉には、どうしても「死後の準備」というイメージがつきまとう。子どもの側は純粋に心配して切り出したつもりでも、親からすれば「もう先が長くないと思われているのか」と受け取ってしまいかねない。話そうと思ったことはあるが、まだ切り出せていないという人も、子ども世代では2割近くいる。
そこでMLSJ社が提案するのが、終活を「死後の準備」としてではなく、災害時や万が一の時にも家族が困らないための"防災"の一部として捉え直す考え方だ。「終活をしよう」ではなく、「災害時に困らないように、大切なものを一緒に整理しよう」と声をかける。同じ内容の話でも、入口を変えるだけで受け取られ方が変わってくるという発想である。
子ども世代の41.4%が困っている現実
この入口の違いは決して建前の話ではなく、実際に困っている家庭は多い。
調査では、親の入院・介護・相続・葬儀後の手続きなどで、親の重要書類や情報の保管場所が分からず困った経験について、子ども世代の41.4%が「ある」「ややある」と回答した。具体的に困ったものとして最も多かったのは保険証券(41.7%)、次いで通帳・キャッシュカード(37.5%)、銀行口座のある金融機関名(34.7%)、印鑑・実印(33.3%)と続く。
さらに、親世代で大切なものを一カ所にまとめて保管している人は30.5%にとどまり、約半数の48.9%は通帳や印鑑、重要書類などを複数の場所に分けて保管していることも分かった。本人にとっては把握できているつもりでも、いざという時に家族が探し回ることになる。「どこに何があるか」を家族で共有できていないことが、手続きの遅れや混乱の直接の原因になっているわけだ。


高齢者ほど、逃げ遅れるリスクが高い
「防災」という切り口を持ち出す背景には、高齢者の被災リスクの高さもある。
東日本大震災では、津波からの避難が遅れたことなどにより多くの高齢者が犠牲となり、総務省消防庁の記録によれば死亡者の56.35%は65歳以上の高齢者だったとされている。認知機能の低下などにより、とっさの判断が難しい高齢者も少なくない。
MLSJ社が提案するのが「逃げ一択防災」という考え方だ。防災袋やリュックで持ち出す備え(「持ってく防災」)に加えて、それぞれの人が大切に思っている物や生活が戻った時に必要になる物を、耐火・耐水機能を持つ金庫でしっかり守っておく。これを「置いてく防災」と定義し、いざという時は迷わず避難だけに専念できるようにするという考え方である。
災害が起きたときに自身の大切なものを持って逃げたいかという問いには、親世代の59.8%、子ども世代の63.3%が「持って逃げたい」と回答しており、子ども世代の方がその気持ちがやや強い結果になった。とっさに持ち出せるかどうかは別として、大切なものへの思い入れ自体は世代を問わず強いことがうかがえる。

防災士が勧める、親子の会話の始め方
今回、防災士・整理収納アドバイザーの藤田実沙さんが、終活を“防災の一部”として捉え直す視点についてコメントを寄せている。
親といつかいなくなる日を想像して話すことのむずかしさに触れたうえで、藤田さんはこう語る。
「『安心して生きるため』の会話から始めてみるのがおすすめです。防災や防犯についてなど、親が日頃不安に思っていることはないか、質問してみましょう。遺産やお墓のことなど、不安に感じている親も多いと思います」
「最近忘れっぽくて…」という会話が出たときは、大切なモノを保管する場所として金庫を使う選択肢を提案するのも一つの手だという。
「資産など一箇所にまとめておきたいものを、しっかり守られる場所で保管しておくことは安心して暮らすことにつながります」
さらに、金庫という限られたスペースに何を入れておきたいかを考えること自体が、自分の人生で大切なモノを選別する機会になるとも述べている。
「『誰になにを残したいか』『人生の最後はなにを頼みたいか』を想像してみる。できれば親子でそんな会話もしてみてほしいと思います。それは、『いつか死ぬから』ではなく『よりよく生きるため』の行動なのですから」

会話のきっかけになる「大切なモノ」チェックリスト
具体的に何から話し始めればいいか分からないという人向けに、MLSJ社は藤田さん監修の「親の“大切なモノ”チェックリスト」を無料公開している。通帳や印鑑といった重要書類、災害時・入院時に必要な情報、相続や手続きで必要になりやすい情報、親が大切にしているもの、金庫や保管用品にまとめておきたいものの5項目に分けてリスト化されており、親子で一緒にチェックしながら会話を進められる構成だ。
子ども世代に、親に終活の話を切り出す際どのような言い方なら話しやすいかを聞いた設問では、「家族が探し物で困らないようにしたい」(33.3%)、「入院や急な体調不良の時に必要なものを確認したい」(32.2%)、「通帳の金額ではなく、保管場所だけ知っておきたい」(27.6%)といった回答が上位を占めた。いずれも「終活」ではなく「もしもの時の備え」という文脈であることが共通している。


「終活の話をしよう」と切り出すから身構えられる。ならば「もしもの時に困らないように、一緒に整理しておこうか」と言い換えてみる。同じ目的であっても、言葉の選び方をひとつ変えるだけで、親子の会話はもう少し自然に始められるはずだ。
『高齢の親の防災&終活』調査概要
調査手法:インターネット調査
調査期間:2026年7月21日〜7月26日
対象者:全国の40〜50代(親と離れて暮らす子ども)174名、60代以上(子どもと離れて暮らす親)174名(計348名)

会社概要
社名:マスターロック・セントリー日本株式会社
代表者:代表取締役 安藤 亮平
所在地:〒141-0022 東京都品川区東五反田2-20-4 NMF高輪ビル4F
事業内容:マスターロック/セントリーブランド製品(耐火金庫、南京錠等)の日本国内への輸入販売およびマーケティング活動
公式HP:https://masterlocksentry.jp/
親の“大切なモノ”チェックリスト(無料ダウンロード):https://x.gd/3pvDv