5000本のひまわりが街づくりの入口に。習志野・鷺沼で「ひまわりキャンパスプロジェクト」始動

千葉県習志野市鷺沼で進む大規模な土地区画整理事業の一角に、約5000本のひまわり畑が誕生した。
かつて地域の夏の風物詩として親しまれた「ひまわり回廊」の思いを受け継ぎ、地域住民と一緒に新しい街への愛着を育てる「ひまわりキャンパスプロジェクト」だ。
一般公開を前に行われたメディアデーを訪れ、満開を迎えつつあるひまわり畑と、開発の先に描かれる街の姿を取材した。
地域に愛された「ひまわり回廊」の思いを継ぐ

会場となったのは、幕張本郷駅から徒歩約6分、習志野市鷺沼4丁目にある野村不動産マンション街区内。視界いっぱいに広がる青空の下、大人の背丈よりも高く育ったひまわりが黄色い花を咲かせていた。
今回の取り組みの背景にあるのが、習志野市民に長く親しまれてきた「藤崎ひまわり回廊」だ。菜園を営む夫婦が、土壌を豊かにする緑肥として植え始めたひまわりが名所となったものの、2025年に閉園。そこで、その思いを受け継ぐ形で新たなひまわり畑が企画された。

野村不動産の長谷氏は「この街づくり自体を皆さんに知っていただく機会として、ひまわりを活用したイベントを実施することになりました」と説明する。
約200人の子どもが種まき、100メートルの壁画も
ひまわり畑の一部は、6月6日に地域の子どもたちが種をまいたエリアだ。鷺沼小学校の児童を中心に、保護者や地元住民を含む250人以上が参加。自分たちの手で、これから街が生まれる場所にひまわりの種をまいた。

会場のそばには、子どもたちが制作した全長約100mのウォールアートも設置されている。青空や虹、ひまわりをモチーフにした色鮮やかな壁面には、参加者の手形などが残されており、電車や周辺の通学路からも目に入るという。
長谷氏は「もともとは白い仮囲いで少し寂しい場所でしたが、ひまわりの絵が並んだことで明るくなったと、近隣の方からも喜びの声をいただいています」と話す。ウォールアートはマンション工事が本格化するまで、今後4~5年ほど残る見込みだ。
8月1日から一般公開、夏らしいフォトスポットも

ひまわり畑は8月1日から14日まで、毎日10時から19時まで一般公開される予定。約5000本のひまわりに加え、ハート形のオブジェやブランコ、ひまわり畑の中に設置された「未来の扉」など、写真撮影を楽しめるフォトスポットも用意されている。
初日の8月1日と2日には、ワークショップのほか、キッチンカーやマルシェが出店する開花イベントを開催。地域住民が気軽に立ち寄り、夏の思い出をつくれる場を目指す。
なお、会場は屋外となるため、来場時にはこまめな水分・塩分補給や帽子、日傘の使用など、十分な熱中症対策を心がけたい。
ひまわりは種をまく時期を1~2週間ずらしており、公開期間中も順次開花していく見込みだ。
地権者が主役となって進める37ヘクタールの街づくり

ひまわり畑が広がるのは、約37ヘクタール、東京ドーム約8個分に及ぶ「鷺沼特定土地区画整理事業」の区域内。農家や地権者約200人で構成される組合が主体となり、野村不動産と竹中土木が業務代行者として街づくりを支えている。
事業の出発点には、農業の担い手不足や相続などによって農地が細かく開発されていくことへの地権者の危機感があったという。開発会社が先導したのではなく、地元の地権者が「みんなで街をつくろう」と立ち上がったことから始まった。
「地元の人たちの思いを、きちんとくみ取って進めなければならない事業です」と長谷氏。2025年9月には、地権者に将来の土地の位置を示す「仮換地指定」が行われ、建物や土地活用を具体的に考える段階へ入った。
長谷氏は現在を「どんな街にしていくかを考えるスタートライン」と表現する。
「人が中心」の新しい街へ

計画では、住宅や商業施設、医療、教育、公園などを備えた複合的な街を整備。イオンタウンの開業や戸建て住宅の建設、鷺沼小学校の移転なども予定され、2029年度の街開きを目指している。
街づくりのコンセプトは「HUMAN GARDEN CITY」。長谷氏は「歩きやすく、多世代が交流できる、人が中心の街にしたい」と語る。一方で、将来の技術進歩にも対応できるよう、時代に合わせた仕組みを取り入れていく考えだ。
このエリアの魅力を尋ねると、長谷氏は「まず、この広い空です」と答えた。駅から近い場所にこれほどまとまった土地が残り、地権者が一丸となって街づくりに臨む機会は珍しいとして、「総武線沿線では最後のピースではないか」と期待を寄せる。
ひまわりから始まる、新しい街の物語

「最終的に街ができたとき、いろいろな場所にひまわりが咲く“ひまわりの街”のようになったら面白い。長く愛されたひまわり回廊が形を変えて復活するストーリーを、これからの街づくりにもつなげていきたいですね」と語る長谷氏。
まだ更地の多い場所に咲いたひまわりは、完成前の街を地域に開き、人々の記憶を未来へつなぐ存在でもある。
地域の子どもたちがまいた種や、仮囲いに残した手形は、これから変わっていく鷺沼の風景を見守り続ける。数年後、新しい街が誕生したとき、今回のひまわり畑が住民にとって街への愛着の原点になっているかもしれない。
ひまわりキャンパスプロジェクト公式SNS:https://www.instagram.com/himawari_project_saginuma/