看護DXの課題を病院の垣根を越えて共有 約260名が集った「チームコンパスユーザー交流会」

医療現場では、患者一人ひとりに適したケアを提供しながら、業務の効率化や医療安全にも取り組む必要があります。限られた時間と人員の中で、看護の質をどのように保つのか。システムを導入した後、現場でどう活用し、スタッフへ定着させていくのか。

こうした課題は、ひとつの病院だけで解決することが難しいものです。同じ仕組みを利用する医療従事者が経験や工夫を持ち寄れば、日々の業務を見直すヒントが得られるかもしれません。
株式会社イノシアは2026年5月22日と23日、京都市内で「第1回 チームコンパスユーザー交流会」を開催しました。全国約90施設から、およそ260名の医療従事者が参加した大規模な看護DXイベントです。

約260名が京都に集まり、現場の知恵を共有

会場となったのは、TKPガーデンシティ京都タワーホテルです。参加者は、イノシアが提供する看護支援システム「チームコンパス」を導入している病院の看護管理者や現場メンバー。同社からも導入、開発、運用に携わる30名以上が参加しました。

今回の交流会は、システムを実際の医療現場に根付かせているユーザー同士が、日頃の取り組みや課題を共有する場として企画されました。単に機能や操作方法を学ぶだけではなく、各病院がどのようにシステムを運用し、看護業務へ取り入れているのかを直接聞ける機会となりました。

全国の医療機関が一堂に会し、立場や施設の違いを越えて話し合えることも、ユーザー交流会ならではの特徴です。会場では、参加者が積極的に学びを吸収する姿が見られました。

6病院の事例と11のテーマから現場の課題を考える

プログラムでは、全国各地の基幹病院など計6病院が「チームコンパス」の運用事例を報告しました。導入後に生まれた変化だけでなく、活用を進める中で見えてきた課題や現場での具体的な工夫も共有されたといいます。

続いて行われたワークショップでは、参加者が11のテーマに分かれて意見を交換しました。テーマには、医師や多職種との連携、情報共有の工夫、新人看護職員への教育、看護過程の展開、キャリアパスへの活用などが用意されました。

そのほか、診療報酬の算定や外部審査への対応、システムと電子カルテの使い分け、監査と日々の評価といった実務的な話題も取り上げられています。病院ごとに運用環境は異なりますが、共通する悩みも少なくありません。具体的な方法を持ち寄ることで、それぞれの施設へ持ち帰れる新たな選択肢が生まれたようです。

専門家の講演から学ぶチーム医療の標準化

交流会では、医療品質を専門とする大学教授による特別講演も行われました。テーマは「顧客に喜びをもたらす医療の提供」です。

講演では、チーム医療の質を保ちながら生産性を高めるために、PCAPS(患者状態適応型パスシステム)を用いた標準化がなぜ重要なのかが解説されました。PCAPSは、患者の状態に応じて診療やケアの流れを組み立てる考え方です。「チームコンパス」の基盤にも、この仕組みが採用されています。

さらに、クリニカルパスの専門家も登壇。従来のクリニカルパスとPCAPSの関係について、専門的な視点から説明しました。現場の事例と理論の両面から学ぶことで、参加者がチーム医療のあり方を改めて考える時間となったことがうかがえます。

AIや勤務管理など、新たなソリューションも紹介

イノシアからは、「チームコンパス」の今後の開発方針に加え、新たなサービスも発表されました。

紹介されたのは、「CompassAI」「施設基準@INX」「看護シフト@INX」「メトリクス」です。看護業務の支援にとどまらず、施設基準や勤務シフト、データの把握など、医療機関が抱えるさまざまな課題に対応する内容となっています。

医療DXでは、システムを導入することそのものが目的ではありません。現場の業務に合った形で活用され、医療従事者の負担軽減や安全性の向上につながることが重要です。参加者にとっては、今後の医療現場を支える技術やサービスに触れる機会にもなりました。

「同じ悩みがある」と知ることが解決への一歩に

終了後のアンケートでは、他施設も同じ悩みを抱えていると分かり安心したことや、具体的な運用方法、マニュアル作成の工夫を知ることができたという声が寄せられました。

講義を通して「チームコンパス」を導入する本来の目的を再認識できたという参加者もいます。また、イノシアのスタッフや他病院の関係者と直接意見を交わせたことを評価する声も紹介されました。プログラム後の懇親会でも交流が続き、施設を越えたつながりが広がったといいます。

アンケートの有効回答者223名のうち、最も多かったのは師長クラスの83名で、全体の37.2%でした。副看護部長クラス43名、看護部長クラス25名を合わせると、看護管理層は約7割に上ります。

参加施設も、民間病院33施設、公的病院27施設、公立病院20施設、国立病院5施設と多岐にわたりました。特定の運営母体に偏らず、幅広い医療機関が参加している点からも、看護現場における業務標準化やDXへの関心の広がりが見えてきます。

現場同士の対話が看護DXを前へ進める

超過勤務の是正や医療安全の確保は、多くの医療機関が向き合う課題です。ただし、システムだけですべてを解決できるわけではなく、実際に使う人同士が知識や経験を共有することも欠かせません。

今回の交流会は、各施設で積み重ねられてきた工夫を持ち寄り、明日からの業務へ生かす場となりました。同じ課題を抱える仲間の存在を知り、具体的な改善策について語り合うことが、よりよいチーム医療と働き方につながっていきそうです。