父の日は「わさびの日」!? 本わさび研究で見えてきた驚きの健康価値
6月第3日曜日といえば「父の日」である。感謝の気持ちを込めてプレゼントを贈ったり、一緒に食事を楽しんだりする家庭も多いだろう。しかし実は、この日が「わさびの日」でもあることをご存じだろうか。
あまり知られていないが、「わさびの日」は本わさびの魅力や価値を広く知ってもらうことを目的に制定された記念日である。寿司や刺身に添えられる薬味として親しまれているわさびだが、その歴史は古く、日本人の食文化を長く支えてきた存在でもある。そして近年、この本わさびが新たな形で注目を集めている。きっかけとなっているのが、本わさびに含まれる「ヘキサラファン(6-MSITC)」という健康成分だ。認知機能や記憶力との関係を探る研究が進み、脳の健康維持に役立つ可能性が報告されているのである。
普段は脇役として食卓に並ぶことの多い本わさび。しかしその小さな存在の中には、日本人がまだ十分に知らない価値が秘められているのかもしれない。
飛鳥時代から続く、本わさびと日本人の深い関係

本わさびは、日本を代表する伝統食材の一つである。その歴史は飛鳥時代までさかのぼるとされ、古くから食用や薬用として利用されてきた。現在では寿司や刺身の薬味という印象が強いが、本格的に広く食べられるようになったのは江戸時代だといわれている。当時は冷蔵や冷凍の技術がない時代であり、わさびには魚介類の臭みを抑えたり、鮮度保持を助けたりする役割も期待されていた。つまり本わさびは、単なる「辛い薬味」ではなく、日本人の知恵とともに発展してきた食文化の一部なのである。
そんな本わさびの価値を改めて見つめ直してもらいたいという思いから制定されたのが「わさびの日」だ。父の日と同じタイミングであることから、家族の健康を考えるきっかけとしても興味深い記念日といえるだろう。
本わさびだけが持つ、希少な健康成分「ヘキサラファン」

近年、本わさびが注目される理由の一つが「ヘキサラファン」という成分の存在である。ヘキサラファンは、本わさびの根茎から抽出される希少な成分で、植物が自身を守るためにつくり出す「ファイトケミカル」の一種だ。強い抗酸化作用や抗炎症作用を持つことが特徴とされている。
人の体では、活性酸素が増えることで細胞がダメージを受け、老化やさまざまな不調につながると考えられている。ヘキサラファンは、この活性酸素の発生を抑える働きが期待されており、健康維持や老化予防の研究対象として注目を集めている。

ここで意外なのが、普段使われているチューブわさびとの違いである。一般的な常温保存のチューブわさびには、西洋わさびが配合されている商品も多い。また、ヘキサラファンは時間の経過とともに分解しやすい成分でもある。そのため、本わさびに含まれる健康成分を十分に摂取するという観点では、本わさびや冷凍・冷蔵タイプの商品が注目されているのである。
認知症予防への関心が高まる中で広がる可能性
日本では高齢化が進み、認知症や軽度認知障害(MCI)への関心が年々高まっている。厚生労働省の推計によると、認知症患者と軽度認知障害の人を合わせると、高齢者の約4人に1人が該当するとされている。こうした背景の中で、世界の老化研究では「AGING HALLMARKS」と呼ばれる老化の主要因に関する研究が進められている。その中の一つとして挙げられているのが、体内で慢性的に起こる炎症である。慢性炎症は加齢とともに起こりやすくなり、認知機能の低下やさまざまな疾患とも関係すると考えられている。ヘキサラファンは抗酸化作用や抗炎症作用を持つことから、この慢性炎症へのアプローチが期待されており、老化研究の分野でも注目される存在となっている。
わさびで脳年齢が若返る?研究で見えた興味深い結果
本わさび由来のヘキサラファンについては、実際に人を対象とした研究も行われている。45歳から68歳までの男女を対象にした試験では、ヘキサラファンを継続的に摂取したグループにおいて、認知機能テストの正答率が向上したという結果が報告されている。また、40歳以上の男女89名を対象とした試験では、30日間の摂取後に脳年齢が平均3.4歳若返る結果も確認された。さらに別の研究では、健康な高齢者が12週間継続摂取することで、加齢によって低下しやすいエピソード記憶や作業記憶が改善したことも報告されている。
もちろん、これだけで認知症を予防できると断言できるものではない。しかし、本わさび由来の成分が脳の働きに関係する可能性が示されたことは興味深い結果だといえる。
アルツハイマー病研究で注目されるヘキサラファン
2026年には、本わさび由来のヘキサラファンに関する新たな研究成果も発表された。研究では、アルツハイマー病モデルを用いた実験が行われ、脳内に蓄積する異常タンパク質「TAU」が減少したことが確認されたという。さらに、脳の炎症が抑えられ、記憶力テストや運動能力にも改善がみられたと報告されている。
現時点では細胞や動物を対象とした研究段階であり、人への効果が確立されたわけではない。しかし、アルツハイマー病研究の分野においても、本わさび由来成分への期待が高まりつつあることは確かだ。
父の日をきっかけに始めたい「わさ活」

こうした研究を受けて提案されているのが「わさ活」である。わさ活とは、本わさびを日常的に取り入れる習慣のこと。目安としては1日小さじ1杯程度の本わさびを食事に取り入れることが推奨されている。また、本わさびの辛味成分は揮発しやすいため、できるだけ食べる直前にすりおろすのがおすすめだという。
刺身や寿司だけでなく、肉料理や冷奴、サラダ、ドレッシングなどに活用すれば、日々の食事にも無理なく取り入れられる。近年では冷凍タイプや冷蔵タイプの商品も増えており、本わさびを身近に楽しめる環境も整いつつある。
ヘキサラファンを活用したサプリメントも登場

ヘキサラファンは非常に希少な成分であり、わさび50kgからわずか10g程度しか抽出できないとされている。そのため近年は、本わさび由来の健康成分を効率的に摂取できるサプリメントも登場している。「& WASABI」もその一つで、日本産本わさびから健康成分を抽出・精製したサプリメントだ。
本わさびを毎日食べ続けることが難しい人や、ヘキサラファンをより手軽に取り入れたい人にとっては、こうした選択肢も広がりつつある。もちろん、まずは日々の食事の中で本わさびを楽しむことが基本だが、ライフスタイルに合わせて活用方法を選べるようになっている点も興味深い。
日本の伝統食材を見直すきっかけに
父の日は、家族への感謝を伝える特別な日である。そして同じ日が「わさびの日」でもあることは、本わさびが日本の食文化において大切な存在であることを改めて感じさせてくれる。寿司や刺身に添えられる脇役として親しまれてきた本わさびだが、その背景には長い歴史があり、近年では健康成分に関する研究も進んでいる。特にヘキサラファンについては、認知機能や記憶力との関係を探る研究が続けられており、新たな可能性が見え始めている段階だ。
健康は特別な習慣だけでつくられるものではない。毎日の食卓で何を選び、どのように楽しむかという小さな積み重ねも、その一つである。今年の父の日は、感謝の気持ちとともに、日本の伝統食材である本わさびの魅力にも目を向けてみてはいかがだろうか。