約6割は対策意識あり! でも行動が伴っていない? キャッシュレス時代に求められる“本当の防犯意識”とは

財布を持ち歩かなくても、スマートフォンひとつで支払いが完結する時代。キャッシュレス決済が当たり前になった今、私たちの生活はより便利になった。しかしその一方で、利便性の裏に潜むリスクも確実に広がっている。

TISインテックグループのTIS株式会社(以下:TIS)は、キャッシュレス決済を利用したことがある全国15~69歳の男女600名を対象に、キャッシュレス決済にまつわる不正利用・詐欺への認知や防犯対策の意識を調査した。その結果、多くの人が防犯意識を持ちながらも、実際の行動には結びついていない実態が明らかになった。本記事では調査結果を紐解きながら、キャッシュレス時代に必要な防犯意識について考えていく。

約7人に1人がキャッシュレス被害を経験

まず見えてきたのは、キャッシュレスに関するトラブルが決して他人事ではないという現実だ。調査によると、クレジットカードやスマートフォンに関する不正利用や詐欺などの被害を自身で経験した人は13.8%、さらに家族や知人・友人では15.3%にのぼった。自身の経験、家族や知人・友人の経験ともに特に多かった被害は、「パスワードや暗証番号の漏えいによる不正利用」だった。また、フリーWi-Fi使用による不正利用といったリスクについては、「見た、聞いたことはなく、知らない」と回答した人が26.7%と最も高く、まだ認知されていないトラブルもあることがわかった。

約6割がキャッシュレス決済の防犯対策「気を配っている」と回答

キャッシュレス決済を利用する際の防犯対策について、「気を配っている」が18.0%、「やや気を配っている」が40.8%と、約6割は防犯対策を意識していることが明らかになった。特に50代では74.0%が「(やや)気を配っている」と回答し、他の年代に比べ高い傾向であった。

一方で、防犯対策に「(あまり)気を配っていない」と回答した人の理由として、複数回答で「何をすればよいかよくわからないから」が46.2%と約半数存在。正しい対策を知らない人が多いことが伺える。そのほかの理由では、「現在の使い方で問題や被害が起きたことがないから」が27.9%、「決済をするたびに防犯対策を考えたり実施するのが面倒だから」が20.6%と続いた。

約6割が同じパスワードを使いまわしている実態も

こうした状況にも関わらず、見えてきたのは「危険性を分かっていても利便性を優先する」という問題だ。日常的な習慣として、59.7%が「同じパスワードを複数のサービスで使い回している」と回答しており、特に10代では64.0%と最も高かった。

その理由としては、「危険性は理解しているが利便性を優先している」と71.5%が回答。危険だと分かっていながらパスワードを使いまわしてしまう人が多いようだ。この意識と行動のズレこそが、キャッシュレス時代における大きな課題と言えるだろう。

どんな防犯対策をしている? 中には対策していない人も…

現在行っているキャッシュレス決済の防犯対策として、複数回答で「生体認証(指紋・顔認証)の設定をしている」が38.2%、「定期的に利用履歴を確認している」が37.0%、「二段階認証ができる場合は必ずONにしている」が33.3%とトップ3に挙がった。全体の8割以上は何かしらの防犯対策を行っている一方で、10代の22.0%、20・30代の24.0%は「キャッシュレス決済の防犯対策として行っていることはない」と回答。10~30代の割合は、40~60代の回答の2倍となり、若年層の方が防犯対策を行っていない人が多い傾向が見られた。

6割以上が「財布よりスマートフォンの紛失が怖い」

財布やスマートフォンの紛失経験は、28.5%が財布・スマートフォンの両方、またはいずれかを「紛失したことがある」と回答し、約3割が紛失を経験していることがわかった。また、財布とスマートフォンでは「スマートフォンの方が紛失するのが怖い」と61.8%が回答し、財布紛失を恐れる人の割合を上回った。30代が70.0%、20代が65.0%、10代が62.0%と若年層は比較的高い傾向であった。

「スマートフォンの方が紛失するのが怖い」と回答した理由として、「あらゆる個人情報が漏れてしまう可能性があるから」が39.4%、「スマートフォンがないと生活全般に支障があるから」が37.5%、「キャッシュレス決済の不正利用の恐れがあるから」が14.0%となった。「財布の方が紛失するのが怖い」と回答した理由では、「クレジットカード等の不正利用の恐れがあるから」が35.8%と最も高かった。

「自分は被害に遭いやすいと思わない」6割以上が回答

しかし、こうしたリスクが広がる一方で、「自分は被害に遭わない」と考えている人も少なくなさそうだ。自身がキャッシュレス決済での詐欺や不正利用といった被害に遭いやすい(ひっかかりやすい)と思うかの認識について、「どちらかというとそう思わない」が50.0%、「そう思わない」が15.2%と、65.2%に上った。年代別では、50代が74.0%と他年代に比べ最も高い結果に。このような過信は、結果として対策の遅れにつながる可能性がある。

一方で、「被害に遭いやすい(ひっかかりやすい)と思うか」について「(どちらかというと)そう思う」と回答した人が「被害に遭いそう/ひっかかりそう」と感じるものでは、「フリーWi-Fi使用による情報抜き取り被害」が25.4%、「クレジットカードのスキミング」が24.9%、「フィッシング詐欺のSMSやメール」が24.4%と、この3つがほぼ同率で挙がった。

安心して使うことができる決済とは?

安心して使うことができる決済手段・方法の特徴では、「生体認証や暗証番号などの認証」が24.8%と最も高い結果になった。続いて「不正利用時に補償がある決済手段/方法」が19.8%と、2番目に高かった。一方で、20代の29.0%は「安全だと思う決済手段はない」と回答。今後、より安心できる決済手段や方法の検討や、既存サービスの認知浸透の必要性がありそうだ。

【調査概要】
調査手法:インターネット調査
調査期間:2026年2月18日(水)~2月20日(金)
調査対象者:キャッシュレス決済を利用したことがある、全国15-69歳男女 計600名

できることから少しずつ対策を

東洋大学 経済学部 国際経済学科 教授 川野祐司 氏

今回の調査結果からは、多くの人がキャッシュレス決済の安全性に気を配っている一方で、行動との間にギャップがあることもうかがえます。生体認証などの新しい技術を試したり、フリーWi-Fiを避けたりすることなどは有効で、今後もしっかり対策すべきところです。パスワードの使い回しについては、十分に複雑なパスワードであれば過度に心配する必要はありませんが、誕生日や連続する数字のような安易なパスワードは避けましょう。安全を意識していても行動に移せないことも調査結果から読み取れますが、完璧を目指す必要はありません。短いパスワードを長くするなど、簡単なことから改善していく姿勢が求められます。

また、暗号化通信などの技術進展により、キャッシュレス決済の安全性は向上していますが、利用者の知識や努力だけで不正利用を防ぐには限界があります。企業には、ユーザーが特別な知識を持たなくても“安心して”使えるようなサービス設計が求められます。安全性とユーザーエクスペリエンスのバランスは、今後のサービス普及のカギとなります。

さらに、どれだけ対策を講じていても、不正利用などのトラブルを完全に防ぐことはできま
せん。そのため、被害の早期発見が何よりも大切です。カードなどの利用履歴の定期的な確認に加え、トラブルが起きたときには速やかにサービス事業者や公的な窓口に相談することが、被害拡大の防止につながります。
今回は技術的な面に焦点が当たっていますが、世界では、ロマンス詐欺や投資詐欺、さらにはAIを使った詐欺も増えています。「自分だけは大丈夫」という思い込みを避けるとともに、社会全体として金融リテラシー教育の充実が望まれます。

社会インフラとしてキャッシュレスの課題解決に取り組む

TIS 株式会社 デジタルイノベーション事業本部 ペイメントサービス事業部長 津守諭 氏

経済産業省によると、2025年のキャッシュレス決済比率は58%に達し、今後も堅調に伸びていくことが予想されています。キャッシュレスが日常の支払い手段として定着する中で、今回の調査からは、多くの方が防犯意識を持ちながらも、実際の対策や行動にはギャップがあることが改めて明らかになりました。不正利用などの啓もう活動もあり、防犯意識自体は全年代で高い一方、キャッシュレス事業者が提供する認証や補償といった仕組みへの期待が大きいことからも、キャッシュレスは社会インフラとしての責任がより一層求められる段階に入っているといえます。

これまでもキャッシュレス事業者は安心・安全の確保に最優先で取り組んできましたが、キャッシュレス決済が普及するにつれ、防犯に加えて「使いすぎへの不安」や「災害時の利用継続性」、「子どもへの教育」といった新たな課題も出てきています。こうした日常に根ざした課題を一つ一つ丁寧に解決していくことがキャッシュレス事業者にとって重要であり、利用者から選ばれるための鍵になると考えています。

キャッシュレス決済はすでに社会インフラとして定着しつつあり、今後もその流れは加速していくだろう。だからこそ求められるのは、単なる意識の高さではなく、日常の行動に結びついた防犯意識。危険を知り、自分ごととして捉え、無理のない範囲で対策を続けていくことが、安全なキャッシュレス社会の実現につながるはずだ。「自分は大丈夫」と思い込まず、改めて自分の防犯対策を見直してみてはいかがだろうか。