ウェルビーイング調査から浮き彫りに 世代間ギャップに見る働き方の意識差

近年、「ウェルビーイング」という言葉を耳にする機会が増えている。働き方改革や健康経営の広がりとともに、単に効率よく働くことだけでなく、「心身ともに満たされた状態で働けているか」が重視されるようになってきた。企業側もさまざまな制度や取り組みを打ち出し、“働きやすさ”の向上に力を入れているように見える。しかしその一方で、現場で働く人々がどれほどその恩恵を実感できているのかは、意外と見えにくい部分でもある。

こうした中、健康経営にいち早く取り組んできた企業のひとつが株式会社タマディックである。同社は2017年に「健康宣言」を掲げ、社員の健康課題の把握と改善に向けた施策を継続的に推進してきた。さらに2025年には「タマディック健康経営研究所」を発足し、2026年には「All for Well Engineer Life」をコンセプトとした新オフィスの稼働も控えているという。今回、同研究所は全国の20代から50代の会社員800名を対象に、「仕事とウェルビーイング」に関する意識調査を実施した。制度や環境整備が進む今、働く人々はそれをどのように受け止めているのか。その実態からは、これからの働き方を考えるヒントが見えてきそうだ。

若い世代ほど高い満足度、広がる世代間ギャップ

仕事におけるウェルビーイングの実感には、世代による差があることが今回の調査から見えてきた。全体では約半数が「ウェルビーイングである」と感じている一方、年代別に見ると傾向は大きく異なる。特に20代では、約6割以上が「ウェルビーイングである」と回答しており、他の年代と比べて高い水準となっている。一方で、40代・50代ではその割合が半数を下回り、年齢が上がるにつれて満足度が低下する傾向が明らかになった。背景には、キャリアの進行に伴う役割や責任の変化が影響していると考えられる。若年層は成長実感を得やすい一方で、中高年層は業務内容や人間関係など、別の要素が満足度に影響している可能性がある。

こうした結果からは、ウェルビーイングの実現には一律の施策ではなく、世代ごとの状況に応じた対応が求められていることがうかがえる。

「残業が少ない=満足」ではないという実態

働きやすさを語るうえで、これまで「残業時間の少なさ」は重要な指標とされてきた。しかし今回の調査では、その前提が必ずしも当てはまらないことが示されている。

ウェルビーイングを感じていない理由として最も多く挙げられたのは、「仕事のやりがいの欠如」であった。一方で、残業時間に目を向けると、「残業が少ない層」であっても満足度が低いケースが一定数存在していることがわかる。単純に労働時間を減らすだけでは、働く人の充足感にはつながらないという実態が浮き彫りになった。

また、要因としては「睡眠や生活リズムの乱れ」や「心理的安全性の不足」といった、職場環境や人間関係に関わる項目も上位に挙がっている。こうした結果からは、ウェルビーイングは“時間の余裕”だけでなく、“仕事の意味”や“安心して働ける環境”といった複合的な要素によって成り立っていることがうかがえる。

働き方の改善が進む中で、求められているのは単なる労働時間の最適化ではなく、働くことそのものの質をどう高めていくかという視点なのかもしれない。

広がる健康経営、その“中身”とのギャップ

健康経営への取り組みは、すでに多くの企業で進められているようだ。今回の調査でも、半数以上が「自社は健康経営を推進している」と回答しており、その広がりがうかがえる結果となっている。

しかし一方で、その実感には大きな差がある。「社内に浸透していない」「形だけに感じる」といった回答が多数を占めており、取り組み自体は存在していても、日々の働き方に結びついていないケースが少なくないことが浮き彫りになった。

また、従業員が求めている施策としては、「質の高い休息」や「リフレッシュできる環境」といった、より実感に直結する内容が上位に挙がっている。単なる制度の導入ではなく、実際に“効果を感じられるかどうか”が重視されている点は見逃せない。

こうした結果からは、健康経営が次の段階に入っていることが読み取れる。取り組みの有無ではなく、その質や浸透度が問われる時代に移りつつあるといえそうだ。

企業選びの新基準に浮上する「健康経営」

健康経営は、働く環境の一要素にとどまらず、企業選びの基準としても存在感を高めているようだ。今回の調査では、約8割が「健康経営を行っている企業を重視する」と回答しており、その重要度の高さがうかがえる結果となった。

注目すべきは、その水準が「福利厚生」とほぼ同等である点である。住宅手当や各種補助制度といった従来の評価軸に並び、「安心して働ける環境」や「働きがい」といった要素が、企業選びにおいて重要視されるようになってきている。また、年代別に見ると、特に20代でその傾向が強く、8割を超える水準となっている。働き方に対する価値観の変化が、より若い世代から顕著に表れているといえそうだ。

こうした結果からは、企業にとって健康経営は単なる取り組みのひとつではなく、人材獲得における重要な要素へと変化していることが読み取れる。今後は“どのような環境で働けるか”が、より一層問われていくことになりそうだ。

出社回帰の中で変わるオフィスの役割

働き方の多様化が進む中で、オフィスに対する価値も変化しているようだ。今回の調査では、「週の半分以上は出社したい」と考える人が7割以上にのぼり、一定の出社を望む声が多いことが明らかになった。リモートワークが定着しつつある一方で、オフィスで働く意義も改めて見直されているといえる。

では、どのようなオフィスが求められているのか。調査では「集中できる静かな環境」や「リラックスできる休憩スペース」が上位に挙がっており、ストレスなく働ける環境へのニーズが高いことがうかがえる。また、「自宅にはない専門性の高い設備や機材」も重視されており、オフィスならではの価値も期待されている。

こうした結果からは、オフィスは単なる作業場所ではなく、働きやすさやパフォーマンスを高める“場”としての役割が求められていることが読み取れる。出社かリモートかという二項対立ではなく、その中身が問われる段階に入っているといえそうだ。

<調査概要>
調査期間:2026 年3月6日(金)~3月13日(金)
調査テーマ:仕事とウェルビーイングに関する調査
調査対象者:全国の20代~50代の会社員800名
調査方法:インターネット調査
出典元:タマディック健康経営研究所

今回の調査を通して見えてきたのは、働き方に関する制度や環境が整いつつある一方で、それがそのまま「実感」につながっているとは限らないという点である。ウェルビーイングという言葉が広がる中で、その捉え方も少しずつ変わってきているように感じられる。残業時間の多さだけでは語れない満足度や、世代によって異なる感じ方、そして「形だけ」と受け取られてしまう健康経営。どれも、働く人それぞれの視点によって見え方が変わるテーマといえそうだ。

だからこそ、これからは制度を整えるだけでなく、それが日々の中で自然と感じられるかどうかが、より大切になっていくのかもしれない。働きやすさのその先にある「心地よさ」や「納得感」。そうした小さな実感の積み重ねが、これからの働き方を少しずつ形づくっていくのではないだろうか。