物価高を背景に始まる「100円朝食プロジェクト」 朝の一食が変えるキャンパスの過ごし方
大学という場所は、授業を受けるだけの場ではない。友人と過ごし、空き時間をやり過ごし、ときには何気ない会話を交わす。そうした時間の積み重ねが、学生生活の質を大きく左右する。最近は、その「過ごす時間」に目を向ける動きが少しずつ広がっている。大学に求められているのは、学びの機会だけでなく、自然と人が集まり、長く居たくなるような環境づくり――いわばキャンパスの“居住性”である。
武蔵野大学でも、このテーマを軸にした取り組みが進められている。その中で始まったのが「100円朝食プロジェクト」。一見するとシンプルな食事提供の施策だが、その裏には、学生の過ごし方そのものを少しずつ変えていこうとする狙いがある。なぜ“朝食”なのか。その理由を追っていくと、キャンパスの新しいかたちが見えてくる。
気軽さと意味を両立する、100円朝食のかたち
「100円朝食プロジェクト」は、有明キャンパスのカフェと武蔵野キャンパスの学生食堂で実施される取り組み。朝の時間帯に、栄養バランスを考えた食事が1食100円で提供される。各キャンパスで1日限定50食ずつ、合計100食の先着制となっており、利用できるのは在学生のみだ。
特徴的なのは、無料ではなく100円という価格設定である点。この金額には、単に安く提供するだけでなく、食事に対する意識や、つくる側への感謝の気持ちを大切にしてほしいという考えが込められている。気軽さと意味づけ、そのバランスが印象に残る。
<メニュー(予定)>


朝食が変える、学生の1日のリズム
この取り組みの面白さは、朝食そのものよりも、その“前後の変化”にある。朝にキャンパスへ足を運ぶきっかけができることで、自然と生活リズムが整いやすくなる。少し早く登校することで、1日の過ごし方にも余白が生まれる。また、これまで静かだった朝の時間帯に人が集まることで、キャンパスの雰囲気も少しずつ変わっていく。授業前のちょっとした会話や、同じ空間にいる安心感。そうしたささやかな変化が、居心地のよさにつながっていくのだろう。
朝食というシンプルな仕掛けが、結果としてキャンパスの“過ごしやすさ”を底上げしている。そんな広がりを感じさせる施策である。
「居心地のいいキャンパス」をどうつくるか

こうした動きの背景には、キャンパスの居住性を見直そうとする流れがある。武蔵野大学では、学生参加型のワークショップを通じて、「どんな空間が過ごしやすいか」「どうすれば自然と人が集まるか」といったテーマについて意見を交わしている。
ここで印象的なのは、単なる設備の改善にとどまらない点である。建築やデザインだけでなく、コミュニケーションや多様性といった視点も取り入れながら、「どのように過ごすか」という体験そのものに目を向けている。空間を整えるだけではなく、時間の使い方や人との関わり方まで含めて考える。そんな発想が、この取り組みの土台にある。
朝の一食から始まる、環境づくりの連鎖
この流れの中で見ると、「100円朝食プロジェクト」はあくまで入り口のひとつである。今後は空き教室の活用や、交流を生み出す仕組みづくりなど、さまざまな展開も予定されている。朝食という身近な行為をきっかけに、キャンパスで過ごす時間の質を少しずつ変えていく。その積み重ねが、大学全体の居心地を底上げしていくことにつながっていく。
100円朝食プロジェクト 概要
実施予定日:2026年度1学期(4月16日~6月10日)月曜日~金曜日 ※授業実施日のみ
場所:
ロハスカフェ(武蔵野大学有明キャンパス3号館2階)8:15~10:30
学生食堂(武蔵野大学武蔵野キャンパス6号館地下1階)8:15~10:00
料金:100円/1食
備考:1日限定50食ずつ、合計100食 ※先着。在学生のみ利用可能
大学はこれまで、「通う場所」としての側面が強く意識されてきた。しかし今、そこに「過ごす場所」としての価値が加わり始めている。朝食をきっかけに少し早く足を運び、誰かと時間を共有する。そんな何気ない変化が、日常の過ごし方をやわらかく変えていく。学びは教室の中だけで完結するものではない。どんな環境で、どんな時間を過ごすかもまた、大切な要素である。
「100円」という小さな仕掛けの先にあるのは、キャンパスのあり方そのものの変化である。その動きは、これからの大学を考えるうえで、静かにヒントを投げかけているように感じられる。